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- 園長通信
- 幼児の生活と表現展 -楽しさとは何か-
幼児の生活と表現展 -楽しさとは何か-
底冷えする園庭に、邪悪な鬼たちの影が差しています。さぁ、大変だ!鬼の襲来を告げる太鼓を、S先生が高らかに叩き鳴らします。子どもたちは手に豆を握りしめ、鬼の動向を伺います。ドキドキと高鳴る胸の音が太鼓の音にかき消され、勇気が勝ったその時、鬼たちはついに姿を現しました。思いもよらぬ動きで攻めてくる鬼たち。まずは年少さんが豆をぶつけます。「鬼は、外!」 豆を受けた鬼は「あいたたたー」と怯みます。それでも年少さんの豆は、あっという間になくなってしまいました。慌てて先生が待つ場所に戻り、にじんだ涙を拭いてみんなで身を寄せ合います。回復した鬼たちは、さらに襲い掛かってきました。次は、年中さんの出番です。「鬼は、外!」鬼に見覚えがある年中さんは、自分から鬼を追いかけて豆をぶつけます。慌てた鬼は一旦逃げるものの、すぐにひるがえって襲い掛かります。年中さんの豆は命中しつつも底をつきてしまいました。そしてついに、年長さんと鬼たちの一騎打ちになりました。何度か鬼の襲来を受けている年長さんは、鬼たちの逃げるルートを先読みし、仲間で挟み撃ちして豆をぶつけます。「鬼は外!」命中、命中、ど真ん中です。さすがの鬼たちも、この応戦にはタジタジです。子どもたちの勇気をたたえ、幼稚園の守り神になることを約束して、退散していきました。
日常の中で多くの経験をしている子どもたちは、その生活の中で数々の足跡を残します。毎年2月に行われる「幼児の生活と表現展」は、その一瞬を垣間見ることができる貴重な機会です。個人の遊びや並行遊びが多い年少児クラスには、多くの個性的な創作物が残されていました。素材そのものに単純な力を加えてできあがった、色とりどりの作品からは「楽しさ」が感じられます。自分以外の考えをもった他者に気づく年中児クラスには、協働による創作物が残されていました。自分のイメージを誰かに伝えるためなのか?はたまた美しさの追求か?ディテールがとても豊かです。そこには「楽しさ」がつまっています。集団での目的を共有することができる年長児クラスには、ダイナミックな創作物が残されていました。経験の積み重ねに心と身体の成長が相まって、より複雑、構築的で、ストーリー性のある作品が生まれました。みんなの個性が集まって、世界に一つだけの目的(創造物)の完成です。ここにもやはり「楽しさ」があふれていました。
何かを「美しい」と思うとき、個人的な判断と普遍的な判断とに分かれます。このうち、個人的な判断について、哲学者のカントは「快適なもの」と表現し、これらは低次の「快」に属するとしています。つまり、高い目的を目指さない、高度の理性を要求しない遊びの中でこそ「快適なもの」は生まれる。これが「楽しさ」の本質なのではないでしょうか。「我々大人の目的に、子どもを引きずり込んでいないだろうか?」「子どもが大人びた目的に息を切らしていないか?」と問いながら、子どもとの時間を楽しみたい!そんな気持ちになりました。
エルマー組・まつぼっくり組さんと学童(スカイマスター)さんが引っ越します
施設型給付の幼稚園に移行して2年目を目前にし、収容定員・クラス数をおさえ、子ども一人ひとりに行き届いた保育の実現に向けた準備が着々と進んでいます。教室を有効活用するために、エルマー組・まつぼっくり組さんが使用する教室を、これまでのホールから、年中・長棟に移すことにいたしました。このことにより、子どもたちの午後の時間の前の大移動が減り、使い慣れた教室エリアで終日過ごすことが叶います。エルマー組・まつぼっくり組さんが使っていたホールは、学童さんが過ごす教室となります。そして、学童さんが使っていた部屋は、2歳児・満3歳児クラス専用の室内遊戯所となります。猛暑の夏や、冬の寒波においても室内で身体遊びを思う存分楽しめるようになります。
2025年2月14日(金)11号
ニューライフ幼稚園 園長 角和麻衣子