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  1. 園長通信
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世界で重視される「21世紀型能力」とは?

太陽が連れてくる灼熱の晩夏から虫や秋風の音色が聞こえる秋へと季節は移り変わろうとしています。静かだった園庭に、今日は子どもたちの声が響き渡ります。その姿は、学期末に見かけた時よりひと回りもふた回りも大きくなり、薄く小麦色を帯びています。長い夏の間に、きっと身体だけではなく、目には見えない心の成長も遂げているのでしょう。

先日Apple社からAIを搭載した携帯電話をリリースするとの報道がありました。このことは、今後の急速なAIの普及を予感させます。園運営も急ピッチで時代の流れに合わせた仕組みづくりが進んでいますが、その速さには日々驚かされています。生物や子どもたちといった自然界に流れている“スローな時間軸”がある一方で、今後社会の変化はさらに加速することでしょう。

AI技術が発展し、グローバル化が進む中で、中・長期的な予測がつかない社会を生きていく子どもたちは、私たち大人がたどってきた道のりの価値観に加え、新しい能力を身に着けていく必要があると言われています。では、その新しい能力とは具体的に一体何でしょうか?この世界共通の問いに対し、多くの国々や国際機関が調査と研究を重ね、答えを模索しています。中でも代表的なのが、国際団体:Assessment & Teaching of 21st Century Skillsによる「21世紀型スキル」です。このスキルの中で特に幼児に関連があるものとして、創造力(ゼロから何かを創り上げたり、成し遂げたりする力)、批判的思考・問題解決(主体性)、意思決定(自己選択する力)があげられますが、ニューライフ幼稚園では創業当初から、これらの目に見えない力や実体験による成長を教育の根幹に据えてきました。特に、創造力が育つプロセスについては子どもの主体性を大切にし、答えが一つではない表現活動などを通して、ゆっくりとした時間の中で丁寧に育まれる様子を、これまでニューライフの懇談会やお手紙などでお伝えしてきました。では批判的思考力は、どのように育まれるのでしょうか?。

夏休みも終わりに近づいたころ、輪になって遊ぶエルマー組さんに話しかけてみました。「今年の夏も、暑い日がたくさんあったね、みんなどうやって過ごしていた?」すると次々と夏の冒険話が繰り広げられます。「暑かったけれど、田舎に行ったよ」「僕は海に行ったよ」「うん、そうだね、横浜が暑いときは、涼しい田舎に遊びに行ったり、海やプールに行って水遊びをすると、暑さが和らぐね。先生はね、お部屋のクーラーの温度を、いつもより少しだけ、低くしてみたよ」子どもたちの会話の花畑に、ふと、小さな好奇心が舞い降ります。「どうして同じ日本なのにさ、涼しいの?」子どもの純粋なまなざしに、すぐに教えてあげたい気持ちをぐっと抑え、問いかえしました。「たしかに...なぜだと思う?」

子どもの主体性を大切にするために、大人は普段の生活のスピードをいったん落とし、答えを隠し、子どもの声を待つことが大切です。世界がどんなにスピードを上げ、簡単に答えを用意できるようになったとしても、限りある命を紡いでいくのは子どもたち自身であり、彼らがそれぞれの人生の主人公なのです。子どもの成長をどれだけ待てるのか?私たち大人が問われているように感じます。