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FROM THE PRINCIPAL

  1. 園長通信
  2. その子の興味か、はたまた集団活動か?

その子の興味か、はたまた集団活動か?

夏至が近付き、自然界がギアチェンジをしてアクセルを踏みスピードをあげるころ、子どもたちの行動も、勝手知った園庭を自分の興味が赴くまま縦横無尽にひろがります。ひらひらと頭上を舞うモンキチョウに魅せられ、後を追う子ども。その子どもの様子に気が付き、ひとり、ふたりと子どもが増え、行列をなします。途中でモンキチョウが大空の彼方へ消え失せると、行列は自然解散し、子ども達はそれぞれ別の何かの興味関心へと散っていきます。個人の強い興味が、集団での探究活動に発展しては、また個人の興味へと移り行き、際限なく続いていきます。好奇心が旺盛な幼少期特有の“自由遊び”です。

子ども達の興味関心が目まぐるしく移り変わる中、長い時間、没頭する子どもがいます。今度は私の興味がわき、様子をのぞいてみました。なにやら石を収集しているようです。「なに、やっているの?」「え?これ?洗ってピカピカにするんだよ」と手のひら3分の1くらいの握りのよさそうな石を差し出します。砂がかぶさっていますが色は黒く艶もあります。「碁石みたいだね」と感想を述べた後で少し後悔、碁石なんて言葉は知らないか、と考えていると意外な言葉が返ってきました。「黒曜石だよ」「へぇ!よく知っているね。洗ったらどうなるのか見たくなってきたよ」「いいよ」どうやら仲間に入れてくれたようです。探究活動のはじまりに胸が高鳴って水道までいき蛇口をひねりました。勢いある水流の中から黒くてピカピカの丸い石が姿をあらわしました。水が滴る石を右手で取り、高く頭上にあげ、片目をつぶって眺める様子から、子どもにとって“特別な石”になったことが分かりました。「飛行石(持つと空を飛べるという伝説の石、宮崎駿作品より)かも!」うん。私も今、そう思ったよ。

10時になると、入室の合図がかかり、子ども達はそれぞれのクラスへ分かれて集団活動の時間に入ります。「片づけをしてお部屋に入りましょう」と放送が流れ、飛行石の探究活動は中断、私たちは一旦解散することにしました。明日の朝、またここで会おうと、固い約束を交わしました。子どもたちは、個別最適な学びと、協働的学びを、いったりきたりしながら成長を遂げますが、それぞれの活動の盛り上がりを中断させたくないという思いが、私たちの最近の葛藤であり課題でもあります。